ジョギング1。

十代のころ、
ジョギングにはまっていた
ころがあったんですよ。


アルバイトが終わって、
ウチ帰って、

メシ食って、
ひと休みしてから走りに行くんで、

いつも
夜の十時は過ぎてました。

当時は髪が長かったんで、
それをひとつにまとめて

気合を入れてから、
スタスタと走り始めるんです。


人の往来が盛んなとこは走りたくないでしょ。

ぶつかれば
おたがいケガするかもしれないし、

ぜぇぜぇいってるブサイクな
フェイスは
ちょっとはずかしいし。

そうなるとさ、
必然的にさびしげな道をえらんで行くよね。

まぁ、ストレス解消が目的なんで、
本格的なものじゃなくて
マイペースに走るんですけどね。

   

とある夜のこと。

街はずれへ向かう
コースを選んだんです。

その方向には清掃工場が建っていて、
当然、夜は稼働してません。

工場に近づけば近づくほど、
人通りもどんどん無くなっていくし、

街灯も少なくなって、
不安にはなるんですけど、
他人を気にせず走れるのは気分がいいんですよ。


工場の敷地は広いんで、
高いフェンス沿いに外周を走っても、
なかなか回り切れるものじゃないんです。

はぁはぁと
息をはずませ走っていると、

人影が見えたんですよ。


トラックの搬入口にある常夜灯の下に、
誰かが立っている。

身長から言えば、
小学校の低学年くらい。

なんでこんな時間に? 

こんな場所に?
 
子供がいる理由がわからない。

腕時計を見れば
十一時をすでに回っている。

あたりに
保護者がいる気配はない。

もしかして、
親に叱られて
この場所に放り出されてしまったのかもしれないな。

だとすれば、
心細いのではないか。

どうしていいか
わからないのではないか。

そう思って、
声をかけてやろうと思ったんです。

勢いよくかけよれば
怖がらせるかもしれないと、
スピードをゆるめて。

もう一度周囲を見まわしても、
やはり誰もいない。

その子、
ひとりきり。

で、

「こんばんは。どうしたの? こんな時間に」
 
つとめて
明るい声を出したんです。

でも返事はない。

怖いのかな?

で、
さらに数歩近づいて、

「こんなとこで、どうしてひとりな――」

もう一度
声をかけてから絶句した。

人形。

そこには
日本人形が立っていたんです。

常夜灯の下。

門柱に立てかけられた、

小学生並みの日本人形。

それが
じっとこちらを見つめている。

あまりにリアルな目で、
まるで射貫くよう。

「――っわ! わっわ!」

おどろいて
一気に呼吸が乱れて、

おかしな声が
出るんです。

目の前の人形が
動き出して、

しがみついてきそうな気がして、

あわてて
逃げ出すんですけど、

脳ミソが混乱して
足がうまく動かないんです。

体が
前に進まなくって、

なぜか空に向かって、
上に上に
って動くんですよ。

人間ってあせると
神経がうまくつながらなくなるんですかね~。


人形は、
ただの不法投棄なんでしょうけど、

がっつりトラウマが
残りました。。。


     

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