わんにゃん怪談 『再配達』


飼い猫のライくんが聞かせてくれた話である。


ライくんの飼い主は二十代後半の男性で、ものしずかなサラリーマンだ。


大のネコ好きであったから、念願のペット可のアパートに住んだのを機会に、保護ネコとしてライくんをむかえいれた。


男性は昼間、仕事で部屋をあけていて退屈なのだが、帰宅するとグリングリン頭をこすりつけ、これでもかというくらい飼い主に甘える。



そんなある日のことだった。


男性がアパートに帰ると、ポストの中に宅配便の不在表が入っていた。


土曜日に再配達をたのんでみたが、届いたものに心あたりがない。


2メートル近い包みで、品名の欄に〈スキー板〉と記されている。


送ってきた相手にも、その住所にもおぼえはない。


なにしろ、男性はスキーなどしない。



「なんだろう?」



と首をかしげている。


ライくんも男性の足もとに立って、ふんふんとニオイをかいでみるが、当然わかるわけがなかった。


とりあえず男性は荷物を部屋にはこびいれる。


せまい空間がさらにせまくなってしまった。


さっそく中身を確認しようと包みを開ける。


ライくんはベッドの上に座って、それを見守った。


しかし、中からでてきたのはスキー板などではなかった。



卒塔婆(そとうば)だった。



墓場で見かける、お経の書かれたあの板。


それが二枚、はいっていたのだ。



南無妙法蓮華経という文字と、男性の名前が書かれている。


享年三十二歳。


今から、三年後の年齢であった。



※電子書籍化する際に、『ネコいぬ怪談』に変更いたしました。


ネコいぬ怪談


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