ネコのみぃちゃんから話をうかがった。
「保護ネコだったわたしを引きとってくれたママさんはね、子供のころからふしぎな能力があるそうなんですよ。ほら、死んだ人が見える、霊能力ってやつ」
そんなママさんが、とある夏の日、近所に住んでるミヨさんとかき氷を食べに行った。
すると、二十代前半くらいの若い女の子がひとりで座っていたという。
店のすみで、うつむいて、さみしそうにかき氷食べている。
それだけならべつに、特別な光景ではない。
ただ、その子の肩に、べっとりしたのが憑いていた。
幽霊だ。
しかもこの世を怨んでる、相当たちの悪いヤツに見えた。
ママさんはこのままじゃその子が取り殺されるかもしれないなとおもって、
「アンタの肩に死んだ人間が憑いてるよ」
と小声でおしえてやった。
するとその子は、
「知ってますッ! ほっといてくださいよッ!」
と急に怒鳴ってきたという。
一瞬で店の中がイヤな雰囲気で充満する。
それでもかまわず、
「これは妹ですッ! 生きわかれた妹なんですッ! お母さんに引き取られて、そこで死んだんですッ! 同棲してた男に、なぶり殺しにされたんですッ!」
そういってわんわん泣きはじめた。
さすがにママさんもよけいなこといっちゃったかなとおもい、
「悪かった悪かった。おばさんが悪かったよ」
そうなだめたそうだ。
きっと死んだ妹に同情していたんだろう。
だからその子は、自分に取り憑いていてもいいんだってかんがえているのだ。
やさしい子だ、とおもった。
ただ。
男だったそうだ。
その子の肩に憑いているのが、脂ぎった、イヤらしい顔の中年の男だったそうだ。
「あの子。今ごろ、どうしてるかねぇ……」
みぃちゃんの頭をなでながら、ママさんはときどきつぶやくのだという。
※『みぃちゃんの話』完全版は電子書籍にて。
※電子書籍化する際に、『ネコいぬ怪談』に変更いたしました。
ネコいぬ怪談
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