ジョギング2。
前に話した
清掃工場の一件以来、
清掃工場の方面には
向かわなくなったんですよ。
その手前の歩道橋を渡って、
川の向こうにある
公園を折り返し地点にしたんです。
で、
ある春の夜
また
長い髪をひとつにまとめて、
走り始めたんです。
そのころって
湿度も低くて、
運動するにはピッタリの時期ですよね。
夏の名残をひきずる秋なんかより、
よっぽどいいでしょ。
ほどなくして公園に着いて
ジャリ道を進むと、
いつものベンチで休憩するんです。
そこは東屋(あずまや)のようなつくりになっていて、
園内すべてを見渡せる位置にあるんです。
髪をほどいて
はぁはぁと乱れた呼吸を落ち着かせてたら、
すごく心地いい風が吹いてきたんです。
まるでね、
シルクとか、
女性の長い髪にでもなでられているような感触の風。
アルバイトの疲れもあって、
目を閉じるとそのまま眠ってしまいそうだったんです。
でもね。
そのとき、ピタリと風が止まったんです。
それだけじゃなく
イヤな熱気と、
なにかの圧力を感じたんですよ。
背後から。
真後ろから。
とっさにふり向いたら、
そこに、男が立っていたんです。
背中ピッタリに。
大男が。
男は無言で、無表情。
ただこちらを、じっと見下ろしている。
おどろいたけど、
視線をはずしてはいけない気がして、
こっち…