すきま怪談番外編・6『老人介護施設』

これは 老人介護施設に勤める Bさんに聞いた話だ。 ある夏の盛りに 3階にある エアコンが いっせいに止まった。 このままでは ご老人たちが 熱中症になってしまう。 施設長に そのことを伝えると、 「すぐに  連絡しておく」 と言われた。 午後、 エアコンの 修理をすることを告げ、 入居中の ご老人たちが全員 食堂に集められた。 それからすぐ、 駐車場に一台の 車が止まった。 ただの乗用車である。 しかも その車から 降りてきたのは 電気屋さんなどではなく 袈裟を着た お坊さんだった。 お坊さんは 施設内に入ると、 慣れたように 三階にあがり、 「なるほど」 と数珠を鳴らした。 しばらくして 1階のフロアに下りてきた 汗だくのお坊さんは 「終わりましたよ。  これで、来年までは大丈夫」 とハンカチで頭をぬぐいながら 帰って行った。 その後、 3階のエアコンは 何事もなかったかのように 涼しい風を 吐き出していた。 毎年、 お盆近くになると なぜか エアコンが 止まるのだ、という。 『老人介護施設』~すきま怪談 番外編・2 すきま怪談➁~死シャゴニュウ (桜洋出版)

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