天獄ランデヴー 第8話 『生贄』
かしゃん、けしょん、こしょ。
かしゃん、けしょん、こしょ。
それはさびついた古い自転車だった。
たるんだチェーンのせいだろう、若い警察官が必死にペダルをこぐたびに騒音をまき散らす。
廃トンネルに全裸の変質者が出没したとの一報を受け、現場に一番近い派出所から急いできたのだ。
彼は警察官になりたいという子供のころからの夢を叶え、いつもやる気と情熱に燃えていた。
そんなおもいがせかせたのか、パトロールにでている同僚を待たず、たったひとりで現場におとずれたのだ。
ギっきィィッ。
効力のうすくなったブレーキをにぎりしめると、スタンドを立て、フェンスの裂け目からトンネル内部に侵入した。
懐中電灯の光をたよりに奥へ進む。
さすがに心霊スポットだけあって、昼間であってもかなり不気味だ。
たったひとりで乗りこんできたことを後悔した、そのときだった。
最奥部から入りこむ逆光に、全裸の男が浮かんで見えた。
見つけたのと同時に、急に緊張してきた。
たかが変質者ではあるが、ひとりで犯人を逮捕したことはない。
いつもは派出所の同僚や先輩と行動を共にしている。
しかし今はひとりである。
ひとりであの男に職務質問をし、場合によっては逮捕しなければいけない。
そのとき、全裸男のかたわらに立つ、ずんぐりむっくりしたガニマタの男にも気がついた。
仲間か?
それとも変質者を捕まえようとしているのか?
…
