天獄ランデヴー  第3話  『目撃』

凌羽が公園からでて、農業高校にむかおうとしたときだった。 「……おいッ、おいアンちゃんッ!」 誰かに呼び止められた。 声のした方向に目をやると、街路樹のかげに六十代くらいの男がいた。 ボサボサの髪。 日に焼けて茶色くなった顔。 無精ヒゲや頭髪には、大量の白髪がまじっている。 服装は数年前に若者のあいだで流行したものを着ていた。 男は、一見してホームレスと判断できた。 「アンちゃん、若いけど……警察の関係者なんだろ?」 おそらく殺人現場で刑事たちといっしょにいるところを見かけたのだろう。 「まあ、そんなところですけども、どうしました?」 男の口調にあわせ、凌羽も声をひそめる。 「ンン……」 男は口ごもり、なにかいおうと迷っている。 ひたいにジンワリ、汗をうかべていた。 「どうぞ、なんでもいってみてください。どんなことでもかまいませんよ」 凌羽が水をむける。 「ああ……。なら……、いおうかな……。アンちゃん、信用できそうだし……」 ホームレスの男は、どこか落ちつきがない。 オドオドと周囲を気にしているようだ。 そんなようすを見てとった凌羽が、 「……もしかして公園のトイレの……、被害者のかたとお知りあいとか……?」 先にたずねる。 「あ、ああ……」 男はうなずいてから、 …

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