天獄ランデヴー  第7話  『全裸』

全裸男の正体がわかり、山端はよろりとあとずさる。 「ど、どうして……。まさか……幽霊かッ?」 うろたえる山端に、 「いえ……。い、生きてます、……何とか……ね……」 全身はゆらゆらとゆれ、まさに風前のともしびのようである。 だがその目には力があり、しっかりとした視線を送ってくる。 「バ、バカな……ッ、たしかに刻んでやったはずだろ……ッ?」 「え、ええ……たしかに……」 レンガの壁に手をついたまま返事をし、ふぅふぅと肩で息をする。 変わりはてた凌羽をまじまじとながめながら、 「……あッ! そうかッ! そうだったのかッ!」 山端がひらめく。 「おまえもッ! おまえもだったのかッ……!」 合点がいったようにひとりうなずく。 そのとき不意に、しゅしゅるる、と金属のこすれる音がした。 あ。 この音。 このあいだ、ボクが殺される寸前に聞いた音。 凌羽がおもいだす。 警戒心をもった凌羽の眼球がかすかに動き、その音の発生元を探る。 すぐわかった。 山端の右手が変だ。 五枚のツメが銀色に光り、すこしずつのびている。 「……まさかなぁ、二回もおなじ人間を刻むとはおもってもみなかったよ……」 ふふん、とあきれたように鼻で笑う。 さきほどまでの狼狽ぶりはすっかりと消えていた。 それどころか、顔には…

続きを読む

RSS取得