結界病棟  第5話  『ひとりかくれんぼ』

ひとりかくれんぼ……? いつだったか、耳にしたことがある。 たしか、こわい遊びのことだったとおもう。 「ごぞんじですか?」 円了がそう聞いてきたので、 「ええ、名前だけは……」 ミチルが自信なさげにうなずく。 「じゃあ、かんたんに説明しますね」 そういって教えてくれた。 ひとりかくれんぼ。 あるいは、ひとり鬼ごっこともよばれるそれは、有名な都市伝説のひとつである。 まず、ぬいぐるみを一体用意する。 その腹部を切り裂き、中に入っている綿などを引きぬく。 そして引きぬいた詰めもののかわりに、空になった腹を満たすだけの米を入れる。 同時に自分の体の一部を入れる。 爪や髪の毛、あるいは皮膚や体液、血液などだ。 該当するものを詰め込んだあとは、針を使い、裂かれたままの腹部を縫いあわせる。 その際は、血管を表現しているという赤い糸を使用する。 そしてあまった赤い糸は、ぬいぐるみの首や体に巻きつけておく。 最後に、ぬいぐるみに名前をつけてやる。 ここでは仮に、☓☓としておく。 これで呪物の完成である。 つぎは、儀式の方法である。 まず塩水をコップに入れ、押し入れなど、あとで自分がかくれる場所に置いておく。 そして、午前三時になったら、 「はじめはわたし、〇〇(自分の名前)が鬼だから」 とぬいぐるみにいって聞…

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