結界病棟 第6話 『結界病棟』
いわれてみればそのとおりだ。
呪いだの、呪障(じゅしょう)だの、ふつうの病院ででてくることばではない。
いままでの流れでここに座っているが、なぜ気づかなかったのだろう。
「もしかして、木の棒とかわたされませんでした?」
峰岸がたずねてくる。
「あ、はい。白くて、いいニオイの」
ミチルがうなずく。
「ああいうものは、ふつうのお医者さんはつかわないですよ」
「で、ですよね。にぎった瞬間、まっ黒に変わって……」
どういうカラクリだったのだろう。
「あれはなんとかっていう神社の裏にはえていた神木の枝らしいんです。悪いモノに影響されている人が触ると変色するので、呪障におかされているかどうかすぐにわかるんです」
リトマス試験紙のようなものだろうか。
「あ、あの、ここは黄天堂病院ですよね? どうしてこんなオカルトめいたことをしてるんですか?」
当然の疑問だ。
超有名病院でこんな診療をしているなんて誰もおもわない。
「これも医療の一環なんですよ」
「そ、そうなんですか……?」
「この世の中にはどんな検査をしても、どんな治療をしても、治らない病や不調というのはあるんです。そのうちの数パーセントは、呪いによるものなんです」
峰岸はうさんくさいことを、さも当然のようにさらりといった。
「もちろん、そんなことを信じない人は多いんです。だっ…