結界病棟  第7話  『心臓』

ミチルは耳をうたがいながら、 「し……、心臓ッ? 心臓ですかッ……?」 聞きかえす。 「さきほど、通常のひとりかくれんぼではぬいぐるみの腹部に本人の爪など、体の一部とお米を入れると説明しましたが」 ミチルがうなずく。 「さらに呪いの濃度を高めるために入れるものがあるんです」 「ま……、まさかそれが――」 「心臓です」 「ッ!」 「ネズミや鳥などの小動物の心臓を入れる場合もあるそうです。そうすることでぬいぐるみに魂が宿る確率がはねあがるんです」 そう聞いて、ミチルが卒倒しそうになった。 あわてて峰岸がかけより、背中をささえる。 「あのクマ、腐敗臭がしたんですが、気づきませんでしたか?」 「い、いえ、まったく……」 「おそらく呪障によって感覚がにぶっていたのでしょう」 「じゃ、じゃあ、あのクマにも鳥とかネズミの心臓が……?」 「いえ。あの大きさはネコ。あるいは小型犬の心臓でした」 「えッ!」 ミチルをひとりかくれんぼに巻きこんだ誰かは、ネコかイヌを殺したというのか。 「それから、クマの体内にあったミチルさんの体の一部なんですが」 円了が白衣の胸ポケットから数枚の写真をだし、その中から一枚をデスクの上に置いた。 動物の心臓を見たくなくて反射的に目をそらす。 すると、その心情に気づいた円了が、…

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