わんにゃん怪談 『時間厳守』
ある日の早朝。
マンションでくらしているヨークシャーテリアのテリーくんが自分のベッドで丸くなって眠っていると、ママさんが青い顔でかけこんできた。
そして、
「――あなたッ! ねぇ、あなたッ!」
荒い呼吸でパパさんをゆりおこしている。
「なんだよぉ、どうしたんだよ」
まだ眠いようで、ぼんやりしたまま、むにゃむにゃと返事をする。
この日、ママさんは早い時間から用事があり、ゴミ袋をさげて部屋をでていった。
だがすぐに、そのゴミ袋をもったまま、部屋にもどってきたのだ。
「ちょ、ちょっと聞いてよ、おねがい、聞いてッ!」
涙をうかべてうったえる。
ただごとじゃないとおもったパパさんは、体をおこした。
するとママさんは、こんな話をはじめた。
マンションの一階にあるゴミ集積所のドアには、
『ゴミはかならず、朝の6時以降にだしてください』
というはり紙がしてある。
あたり前のはなしではあるが、住人たちはそのルールをしっかり守っているようだ。
自分たちも今まではずっとその規則を守ってきた。
だが今日、どうしても始発ででかけなければならない用事ができてしまって、朝の四時半すぎにゴミをだしにいった。
すこし早いくらいならだいじょうぶだろう、という気もちもあったのだ。
生ごみの入った袋をもち…