わんにゃん怪談 『ゴミ屋敷』

東海地方のとある町に住む、ノラネコのセナくんにこんな話を聞いた。 「オレの縄張りの中にな、ゴミ屋敷があったんだよ」 そこには七十歳をすぎた男性がひとりで住んでいたという。 どこかからもち帰った空き缶や粗大ゴミが室内や庭にあふれかえっていて、悪臭や害虫、ネズミなどが多く発生する原因になっていた。 さらにはそのゴミが敷地の外にもはみでていて、通行人の邪魔になっている。 近くには小学校があり、通学路にもなっているので、なんども役場の職員がゴミの撤去をするように説得をつづけてきたが、家主の男性は首をたてにふらない。 そしてついに行政代執行(ぎょうせいだいしっこう)ということになった。 つまり、役所が住人にかわってゴミ屋敷を片づけることとなったのだ。 「まぁ、オレにしてみりゃあそのへんでネズミをよく見かけるからな、腹が減ったときは待ちぶせしたりして、けっこうたすかってたんだけど。人間たちには耐えられなかったんだろうな」 当日、セナくんは近くのブロック塀の上からその状況をながめていた。 住人男性は声をあらげて反対したが、もうどうすることもできない。 役場の人間と掃除業者が、内部をながめながら打ちあわせをしている。 すると、 「あのぅ。二階はキレイなんですよね。ゴミひとつないんですよ。まるで潔癖症の人がくらす部屋みたいです」 業者のひとりが首をか…

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